場面緘黙症だった頃。一歳上の姉。
私には、一つ年上の姉がいます。誕生日は数日違いなので、私とはちょうど一歳違う姉です。物心ついた時から、おままごとをしたり、絵を描いたり、かくれんぼしたり、いつも一緒にいました。
姉は、丸くて大きな目のくるくるしたくせっ毛がかわいい女の子でした。本人にとっては、コンプレックスのようでしたが、色白で外国人の様な見た目の姉は、子どもの私から見ても、とてもかわいく、自慢の姉でした。どこに行っても周りの大人たちは、みな姉を褒めるので、私は見た目に自信がなくなったくらいです。私は、髪の毛がまっすぐで、目も切れ長で、おかっぱ頭にしていたので、こけしのような風貌でした。
かわいい姉でしたが、性格は気が強くて私はよく泣かされていました。「お前のものは俺のもの。俺のものは俺のもの。」ジャイアンの名台詞を地で行くような性格で、姉が買ってもらったおもちゃを貸してもらおうとしても、頑として貸してくれませんでした。そんな姉ですが、私と性格が似ているところもあって、外では大人しい内弁慶タイプだったりします。
幼稚園に入ると、私は場面緘黙症になり、外では一言も声を発することが出来なくなりました。声を出さない変な子は、幼稚園のクラスですぐに苛めにあうようになります。周りを取り囲まれて悪口を言われたり、お絵かき帳にいたずら書きをされたりしました。「なんで話せないの!」「気持ち悪い!」子どもの言葉は、真っ直ぐで残酷です。私は泣いてしまいました。
突然泣き出した子どもに気が付いた保育士の先生は、訳を訪ねますが、私は答えることができません。「泣いてばかりじゃダメじゃないの。赤ちゃんじゃないんだから、ちゃんと答えなさい。」そう言われても、声が出せないのです。伝えたいのに、伝えられないもどかしさで、ますます涙が止まらなくなりました。
その様子を姉が遠くで見ていて、家に帰ってから姉に問い詰められました。私は「○○ちゃんたちが、私の悪口を言うの。」と答えました。「あぁ、あの釣り目の生意気な子ね!わかった。」そう言うと、翌日から、姉と姉の友だちが自由時間に私のクラスに来てくれるようになりました。再び私を取り囲んで悪口を言おうとすると、その間に入り、私を守ってくれました。
また、私は先生と頷きでしか、お話ができませんでした。なので、先生がどうしても詳しく知りたいことがあると、姉を呼び出して、通訳をしてもらうことがありました。少し離れたところに行って、私はこそこそと姉に話を伝え、それを姉が先生に伝えます。そんな調子で、私の幼稚園での一年目は、姉に頼り切って過ごしました。
姉には強情で意地悪なところがあって、私はいつも泣かされました。それでも、私は姉が大好きでいつもそばにいました。今でも、一番の親友は姉だと思っています。姉がこまっていたら、私は火の中でも飛び込んでいきます。姉に裏切られたとしても、私はそれでも姉を慕い続けます。大げさかもしれませんが、そのくらいに、私は幼少期に面倒を見てもらったことに恩義を感じています。
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